自動車の社会的費用 (宇沢弘文/岩波新書)

宇沢弘文
岩波新書

1974年9月 初版本書では、自動車(とその普及に伴って整備される道路)が公害、環境破壊、交通事故、犯罪をもたらし、また健康や安全な移動を妨害することで、社会的費用が発生しているにもかかわらず、自動車の便益を享受している人が、そのわずかしか負担していないことを批判しています。そしてどのように、またどのくらい社会的費用が発生しているかを経済学的に示しています。箱物行政によくある絵空事な入場者数のように、ここで説かれている社会的費用の数値には疑わしいものがあると感じました。費用やら経済効果の算定なんて、恣意的にいくらでも操作できるような気がしますし・・・それにしてもやり過ぎですw全ての道路を4m拡幅して歩道を確保せよ、、、ってそこまで広くしなくても、と流石に思います。

しかし一方で、自動車を中心とした道路の設計がなぜいけないのか、という問題提起に対する基本的な姿勢にはすごく納得しました。

なぜ自動車の通行によって歩行者の権利が奪われなければならないのか。

交通量の多い車道の横に申し訳程度の歩道が整備されているだけ。とても歩行者同士がすれ違うこともできない。また道路を横断するために、渡りきれるかどうか微妙なほどの時間の猶予しか与えてくれない信号を通り、障害者や老人が決して使えるはずのない歩道橋を昇らなければならない。これを異常と言わずして、なんと言いましょうか。筆者はこういったものを「非人間性の象徴」であり、「俗悪な」ものと評しています。

万人が移動する権利を有しているはずなのに、それを阻害することは許されません。また等しく何らかの移動手段が提供される必要があるでしょう。それなのに一部の人しか利用できない自動車に主眼を置いたまちづくりを行ってきたことは、今となっては見直すべき課題です。

こういった問題提起を40年も昔に指摘していることは、とても評価できると思います。ちょっと極論過ぎる感も否めませんが。因みに経済学の本なので、そっちに詳しくない私は理論のところが全然分かりませんでしたw

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カテゴリー: 書評

作成者: きたけん

神戸出身&在住。大学では環境を学び、今はまちづくりに携わる。思い立ったらすぐに飛び出してしまう。